身体拘束の最小化について

身体的拘束最小化に向けた当院の取り組みについて

 南九州病院では、すべての患者さんの尊厳と人権を守ることを最も大切にし、一人ひとりの「その人らしさ」を尊重した医療・ケアの提供に努めています。

 入院されている患者さんは、環境の変化や不安、体調の変動などの影響を受け、一時的に認知機能や判断力が低下し、思いがけない行動をとられることがあります。例えば、落ち着きがなくなる、安静などのご説明した内容を理解することが難しくなる、といったことを生じる場合があります。そのような状況においても、当院では患者さんの尊厳を大切にし、生命に危険が及ぶ緊急時を除いて、見守りや環境調整、声かけなどを工夫し、できる限り身体的拘束に頼らないケアを行っています。

身体的拘束とは

 身体的拘束とは、手足をひもで縛る、身体をベルトでベッドや車いすに固定する、手にミトンを装着するなど、患者さんの行動を制限する行為を指します。身体的拘束は、一時的に安全が保たれているように見える場合でも、患者さんに強い不安や恐怖を与え、尊厳を損なうおそれがあります。また、認知症の症状を悪化させたり、身体機能や生活の質を低下させたりする可能性もあります。

当院の対応

 やむを得ず、生命や安全を守るために一時的な対応が必要と判断される場合には、その必要性を慎重に検討したうえで、患者さんへの負担が最も少ない方法を選び、必要最小限の拘束時間にとどめます。その際には、ご本人とご家族への説明を十分におこない、ご理解いただくよう努めます。
  一方で、身体的拘束を行わないことにより、起立・歩行時の転倒やベッドからの転落を生じる可能性があります。また、治療に必要な管類が抜けてしまうと治療の継続が難しくなったり、体の状態が急に悪くなったりする恐れがあります。当院では可能な限りの事故防止策を講じてまいりますが、こうしたリスクがあることについても、あらかじめご理解いただけますようお願い申し上げます。

身体拘束を最小化するための指針

 本指針は、南九州病院(以下当院)において、患者の尊厳と主体性を尊重し、拘束を安易に正当化することなく、職員一人一人が拘束による身体的・精神的弊害を理解し、拘束廃止に向けた意識をもち、緊急・やむを得ない場合を除き身体拘束をしない診療・看護の提供に努めることを目的とする。

1.基本的な考え方

 当院において、患者の尊厳と主体性を尊重し、拘束を安易に正当化することなく、職員一人一人が拘束による身体的・精神的弊害を理解し、拘束廃止に向けた意識をもち、緊急・やむを得ない場合を除き身体的拘束をしない診療・看護の提供に努める。身体的拘束最小化・廃止を実現していく取り組みは、院内におけるケア全体の向上や生活環境の改善のきっかけとなりうる。身体的拘束を最小化・廃止していく過程で提起されたさまざまな課題を真摯に受け止め、よりよいケアの実現に取り組んでいく。

2.基本方針

 身体的拘束は、入院患者の生活の自由を制限することで重大な影響を与える可能性がある。当院は、入院患者一人一人の尊厳に基づき、安心・安全が確保されるように身体的拘束についての基本的仕組みを見直し、運営する。身体的・精神的影響を招く恐れがある身体的拘束は、緊急時や安全性が確保できないと医学的に判断された場合を除き原則禁止とする。

3.身体的拘束の定義

 抑制帯等、患者の身体、または衣服に触れる何らかの用具を使用して、一時的に当該患者の身体を拘束してその運動を抑制する行動の制限をいう。
身体的拘束その他、入院患者の行動を制限する具体的行為にあたるものとして、厚生労働省が「身体拘束ゼロへの手引き(平成13年3月厚生労働省「身体拘束ゼロ作戦推進会議」)」の中であげている具体的な行為を下に示す。

  1. 徘徊しないように車椅子や椅子、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。
  2. 落しないように、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。
  3. 自分で降りられないように、ベッドを柵(サイドレール)で囲む。
  4. 点滴、経管栄養等のチューブを抜かないように、四肢をひも等で縛る。
  5. 点滴、経管栄養等のチューブを抜かないように、または皮膚をかきむしらないよう に、 手指の機能を制限するミトン型の手袋等をつける。
  6. 車椅子や椅子からずり落ちたり、立ち上がったりしないように、Y 字型抑制帯や腰 ベルト、車椅子テーブルをつける。
  7. 立ち上がる能力のある人の立ち上がりを妨げるような椅子を使用する。
  8. 脱衣やおむつはずしを制限するために、介護衣(つなぎ服)を着せる。
  9. 他人への迷惑行為を防ぐために、ベッドなどに体幹や四肢をひも等で縛る。
  10. 行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に服用させる。
  11. 自分の意思で開けることのできない居室等に隔離する。

4.緊急やむを得ず身体的拘束を行う要件

患者または他の患者等の生命または身体を保護するための措置として、緊急やむを得ず身体的拘束を行う 場合は、次の3要件をすべて満たした場合に限る。

  • 【切迫性】 :患者本人または他の患者等の生命または身体が危険にさらされる可能性が著しく高い状態 にあること。
  • 【非代替性】:身体的拘束その他の行動制限を行う以外に代替法がないこと。
  • 【一時性】 :身体的拘束その他の行動制限が一時的であること。

5.やむを得ず身体的拘束を行う場合の基本方針

やむを得ず身体的拘束を行う場合は、身体拘束対応マニュアルに従い実施する。その際は、以下の点に留意する。

  1. 「緊急やむを得ない場合」であるかどうかの慎重な判断切迫性、非代替性、一時性の3つの要件に照らし合わせ、多職種で判断をする。
  2. 本人・保護者や家族等(以下、「家族等」という。)への丁寧な説明と同意
  3. 個別支援計画への記載
  4. 実施中の注意深い観察
  5. 記録
  6. 終了・継続・手法の見直しを組織的に評価

6.鎮静を目的とした薬物の適正対応

適切な評価を行い、不眠に対する薬物療法が必要と判断された際には、認知症ケアチームの医師・薬剤師を中心として不眠時や不穏時の薬剤使用に関して適正化に向けた調整をすすめる。せん妄を惹起する可能性や睡眠薬・鎮静薬による耐性や離脱症状、乱用のリスクを考慮した上で検討を行う

7.身体的拘束の最小化のための体制

身体的拘束の最小化を目的として、当院職員による虐待防止と身体的拘束最小化対策として障害者虐 待防止委員会の下部組織として身体的拘束最小化チームを設置する。

  1. 構成員
    医師、認知症看護認定看護師、病棟看護師長、看護師、薬剤師、リハビリテーション科(理学療法士・作業 療法士)、医事課
    (1) 委員会は上記構成員をもって構成するほか、必要に応じその他の職種職員を参加させることができることとする。
  2. チームの役割
    (1) 身体拘束の実施状況を把握し、管理者を含む職員に定期的に周知する
    (2) 身体拘束等を最小化するための指針を作成し、職員に周知し活用する
    (3) 定期的に指針の見直しを実施する
    (4) 入院患者に関わる職員を対象とし、身体拘束の最小化に関する研修を定期的に行う
  3. 身体拘束最小化のための活動
    (1) チームラウンド
    (2) 身体的拘束最小化のための研修
    (3) 身体的拘束の実施状況の報告

8.職員研修に関する基本方針

身体的拘束の最小化と虐待防止のために必要な知識を普及・啓発することを目的とし、職員全員を対象とした研修を年1回以上、そのほか新任・転入時など適切な時期に研修等を行う。

9.やむを得ず身体的拘束を行った場合の報告方法等の方策に関する基本方針

やむを得ず行った身体的拘束の実施状況については、当該部署から身体拘束最小化チームに報告し、身体拘束最小化チームで集約の上、定期的に障害者虐待防止委員会に報告する。なお、手順に従わずに行われた身体拘束は虐待とみなし、虐待防止指針に定める虐待の報告方法等の方策と同様に対応する。

10.利用者等に対する当指針の閲覧に関する基本方針

本指針は、患者又はそのご家族や関係機関が閲覧できるようにし、院内に掲示し、当院のホームページ上に掲載する。

11.その他身体的拘束の最小化の推進のために必要な基本方針

当院では、職員が共通認識のもと、身体拘束を行わない状態の実現を目指すため、拘束を誘発する原因を探り、安心安全な環境整備を検討し、常に代替的な方法がないか検討・工夫を行い、改善を推進するものとする。また、必要に応じ、身体的拘束最小化について外部機関に適切な助言を求めるほか、関連の法令を遵守するとともに、関連学会から示された考え方及びガイドライン等を参考に実施する。

この指針は、令和7年5月29日より施行する。