高精度放射線治療センター
南九州病院では、2023年11月に放射線治療装置を一新し、Varian社製TrueBeamが導入されました。院内各科との連携はもちろん、姶良・伊佐保健医療圏および曽於保健医療圏で唯一の放射線治療施設として、地域の皆様に安心・安全な放射線治療を提供するために「高精度放射線治療センター」として立ち上がりました。最先端の強度変調放射線治療や定位放射線治療も、目的に応じて実施してまいります。
センター長:高江洌 伸(たかえす しん)日本放射線腫瘍学会 放射線治療専門医
診療体制
高精度放射線治療センターでは、放射線治療医、放射線治療専門技師、放射線治療品質管理士、放射線療法認定看護師など、他職種との緊密な連携により診療を行っています。鹿児島市以外では数少ない、常勤の専門医が管理する放射線治療施設であり、緊急性のある場合は当日の治療も可能な体制を整えております。
放射線治療とは
放射線治療はがん治療の重要な選択肢です。がんの治癒や症状の緩和を目指し、手術や化学療法(薬物療法)と並ぶ治療の柱です。放射線はがん細胞のDNAを破壊し、結果としてがん病巣の死滅が促されます。最新の放射線治療装置の進歩により、精密な照射が可能となり、周囲の正常組織への被害を最小限に抑えることができます。これにより、患者さんにとってより身体に優しい治療が実現しています。疾患によっては仕事を続けながら、外来で治療を受けることも可能です。
主な対象疾患
全身の悪性腫瘍
- 呼吸器領域
- 肺癌、縦隔腫瘍、胸膜中皮腫
- 乳腺領域
- 乳癌
- 消化器領域
- 食道癌、肝癌、膵癌、胆道癌、大腸癌(直腸癌、結腸癌)
- 泌尿器科領域
- 前立腺癌、膀胱癌
- その他
- 皮膚癌、血液腫瘍(悪性リンパ腫、骨髄腫など)、各種転移性腫瘍
上記以外にも対象となる疾患は様々あり、全身にできるほとんど全ての”がん”が対象です。詳しい適応については、ご遠慮なくお問い合わせください。
当院での治療内容
強度変調放射線治療(IMRT,VMAT)
-
患者さんの周囲を放射線発生装置が回転しながら、患部に放射線を照射します。回転しながら照射ビームの形、出力を自在に変化させることで、がん組織に放射線を集中させ、かつ正常組織への線量をより低減させることが可能となります。従来の装置に比べてより短時間での治療が可能であり、快適な治療が実現されました。
定位放射線治療(SBRT,SRT)
定位放射線治療は、数cm程度の小さな病巣に対して正確な位置合わせを行い、1回の照射で通常の放射線治療の数倍の高線量を照射する治療法であり、ピンポイント照射とも称されます。高線量を投与することで高い局所効果が得られる一方、周囲の正常組織の線量は低く抑えられ、副作用を軽減できます。早期肺癌や肝臓癌が代表的な適応疾患ですが、その他の疾患でも公的医療保険を用いて治療が可能な場合がありますので、お気軽にご相談ください。
画像誘導放射線治療
当院の放射線治療装置では、患者さんが治療台に横になったまま、レントゲンやCTの様な画像を撮影することができ、病巣の位置を精密に把握できます。これによりミリ単位の小さな誤差も修正して照射することができます。
また、体表面位置合わせ装置も備えており、リアルタイムで体動を監視することでより精密で正確な治療が可能となります。
呼吸同期照射
腫瘍の部位によっては、呼吸による影響で大きく病巣が動くことがあります。胸やお腹の動きを適切にモニターすることで体内での腫瘍の動きを把握することができるようになりました。呼吸による患部の動きに配慮しながら、より精密で正確な治療が可能となります。
治療実績
※表は横にスクロールしてご覧いただけます。
2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | |
---|---|---|---|---|
新患数 | 95 | 106 | 89 | 144 |
放射線治療 実人数 | 126 | 135 | 114 | 168 |
脳・脊髄 |
0 | 0 | 0 | 0 |
頭頚部 |
0 | 0 | 2 | 4 |
食道 |
2 | 3 | 2 | 3 |
肺・気管・縦隔 |
40 | 50 | 44 | 73 |
うち『 肺 』 |
40 | 50 | 41 | 70 |
乳腺 |
36 | 37 | 22 | 47 |
肝・胆・膵 |
2 | 2 | 4 | 4 |
胃・腸管 |
6 | 9 | 10 | 7 |
婦人科 |
1 | 1 | 2 | 3 |
泌尿器科系 |
5 | 3 | 2 | 2 |
うち『前立腺』 |
2 | 3 | 1 | 1 |
造血リンパ系 |
2 | 1 | 0 | 0 |
皮膚・骨・軟部 |
0 | 0 | 1 | 0 |
その他(悪性) |
1 | 0 | 0 | 1 |
治療の流れ
①検査・診断
まずはかかりつけ医で検査をすすめ、診断を付けていただきます。その結果、放射線治療の必要があると判断された場合、南九州病院 高精度放射線治療センター宛てに紹介状を作っていただき、かかりつけ医(地域医療連携室等)を通して予約をお取りいただき南九州病院を受診してください。
②初回診察
依頼いただいた内容や検査結果、診察から放射線治療の適応を判断し、照射する範囲や治療回数等を決定します。決定した内容を説明して十分に納得いただいてから治療を進めていきます。
③治療準備
放射線の量や範囲は専用のコンピューターソフトで計算されます。これに用いる治療計画用のCT画像を撮影します。場合によっては専用の固定具を作成し、MRIを撮影することもあります。
④治療開始
原則的に治療は1日1回、10~30分程度です。これを平日に毎日行います。土日や祝日はお休みです。治療期間は疾患・目的により異なり、1日で終わるものから1ヶ月前後かかるものまで様々です。また、場合によっては、1日に2回の照射や数日おきの照射が必要な場合もあります。治療中は定期的に医師、看護師による診察を受けて頂き、副作用があれば適切に対処します。
➄治療終了
終了後の経過観察は、定期的にかかりつけ医で行っていただきます。
費用について
南九州病院 高精度放射線治療センターでの放射線治療は保険診療ですので、高額療養費制度が適用されます。また、適応となる代表的な疾患は前立腺癌、肺癌、転移性癌などをはじめとして、体内にできるほとんど全てのがんが対象です。 費用については照射方法、回数、保険の区分によって異なりますのでお気軽にお尋ねください。
医療従事者の方へ
医療連携・紹介制度について
南九州病院 高精度放射線治療センターは完全予約制で運営しております。
放射線治療の申し込みについては、上記リンクからご参照ください。